高山病対策でダイアモックスの正しい飲み方は?

ダイアモックスⓇは、急性高山病の薬として知られてきています。このため、海外の高い山に行く人から良く問い合わせを受けますが、最近は富士登山でも使われることが増えてきました。
ダイアモックスⓇは、予防に効果があるとされ、高い山の登頂を目指す人や、高い山に登山者を引率する方の関心が高いようです。しかし、実際にはちょっとニュアンスが異なります。ダイアモックスは、高山病の予防薬というより、「高度順応を早める薬」 と考えてください。
では、万能ですか?いえ、万能ではないのです。
ダイアモックスを飲んでいても、高山病になる人もいますし、副作用で体調を崩す人もいます。
では治療薬としてはどうでしょうか。ダイアモックスⓇは高山病、その重症型の脳浮腫の治療薬にあげられますが、特効薬のような効き目は乏しく、有効なのは軽い急性高山病の初期症状だけです。重症化して命に関わる高地肺水腫や高地脳浮腫などには効き目は見込めません。

ダイアモックスⓇを使う前に、まず、「高度順応」の仕組みを知りましょう。
順調な高度順応とは、標高が高い場所では、呼吸をたくさんして、尿をたくさん出すことです。
さて、どういうことかと言うと、標高が高くなり酸素が薄くなってくると、人の体は酸素を沢山吸うために、呼吸の回数が増えます。これにより酸素を沢山取り込めるのですが、同時に吐く息から二酸化炭素がどんどん出て行きます。こうして体内から二酸化炭素が減ってしまうと、体はアルカリに傾きます。それを元に戻すためには余分なアルカリを身体から出そうとします。どこから出すかというと、尿からです。高度順応の基本は、呼吸をたくさんして、尿をたくさん出す、というメカニズムがこれで理解できました。例えば、エベレストのベースキャンプ(標高5300m)では、睡眠中に尿が2リットルも出ます。何度も目を覚ましては用を足します。これは面倒なようですが、順応している良い証拠なのです。
ここでダイアモックスⓇに話を戻しましょう。ダイアモックスⓇは、尿にアルカリ成分を排泄するという特徴的な利尿薬です。ダイアモックスⓇを内服すると、アルカリ尿が出るようになります。人の体はもともと中性ですから、アルカリが不足して酸性に傾こうとすると、これを中性に戻すために、吐く息から二酸化炭素を出そうと、呼吸の回数を増やします。先ほど説明した本来の高度順応の、逆の手順になります。吐く息から出て行く二酸化炭素と、尿から排泄されるアルカリは、シーソーの関係にあって、シーソーをいつも平衡にしようとするのが、高度順応の反応と言えますね。さらに、ダイアモックスⓇは、呼吸を直接刺激する、という報告も出ていますので、高所順応にはやはり有効と言えそうです。
しかし!!!ダイアモックスⓇの最大の副作用は、利尿作用による脱水です。高所の2大病は、「高山病」と「脱水症」です。高所登山は、ダイアモックスⓇとは別に、脱水を起こしやすいのです。これは、登山中は呼吸の回数が増えるため吐く息から水分がどんどん蒸発していること、高所の乾燥した環境では水分が逃げていくこと、トイレを我慢して水を飲まないこと、水が重いのであまり持ち歩かないこと、など、理由が重なってきます。もともと脱水になりやすい所に、利尿剤を内服することは、脱水状態を助長することになるのです。脱水は、高山病を悪化させますので、結果として副作用で体調を崩し、登山を断念する人もいます。
もう一つ!ダイアモックスⓇの内服中は、高所でパフォーマンスが低下することが報告されています。つまり、酸素の少なさに適応しても、パフォーマンスが落ちるので、高所での活動能力が維持できるわけではないのです。
では、どんな人がダイアモックスⓇを使うのでしょうか。
最も必要とされるのは、御嶽山の噴火災害のように、急に標高を上げて任務遂行をしなくてはならない状況での救助隊員の選択肢といえます。
さらに、厚生労働省から高山病には保険適用を受けていない薬ですので、保険では処方されません。
結論:高所は、登り方、戦略次第で、薬要らずで登れるのです。