山岳医療救助情報 Mountain Medicine and Medical Rescue Information

アラスカ寒冷障害GL(2005):雪崩救助

(7)雪崩救助 -1.はじめに

A.全般に、雪崩死亡の80%が窒息、10-15%が外傷、5%が低体温症に起因する。

B.これまでに最も詳細な雪崩埋没の研究は、422名の埋没者についてなされ、43%が生存していた。 もし犠牲者が埋没15分以内に救出されたら、生存チャンスは92%である。しかしながら、埋没後15-35 分では、生存率は急速に30%に低下する。35-90分の間では、生存曲線はほぼ水平となり、90分後 に再び低下し、130分後には生存率は3%となる。

C.最初の15分間の生存率92%は、これまで考えられていたより高かった。15分以内に救出された123名の犠牲者のうち、8名が死亡した。そのうち2名のみが窒息死であった。残りの6名の死亡は致命的な外傷によるものだった。続く20分(埋没後15-35分)の急速な生存率の低下は、窒息、主に、air pocketの無い犠牲者を反映している。35-90分の間の水平な生存率は、air pocketがあるためにこの間は生存しており、死亡のリスクは低い事をしめしている。雪による保温効果は急速な低体温症の進行を防いでいる。90分後に生存率がさらに下方に傾くのは、air pocketは存在しているが外界からは閉鎖されているため、犠牲者の死が始まる事を反映している。

D.埋没後最適な15分以内に犠牲者を救出する為に、犠牲者はその仲間によって位置が同定され救出されなければならない。通報、人員招集、訓練を受けた救助者が現場に到着するまでには、時間がかかってしまう。バックカントリーへ行く者は、雪崩捜索、救助技術を知らなければならない。シャベル、折りたたみ式プローベ、ビーコンを携帯し、使い方を知っているべきである。彼らはair pocketの重要性と雪崩に巻き込まれた時にair pocketをいかに作るかを教わらなければならない。しかし、この情報とこれらの技術のを身につけうることは、安全の誤解を招きうるかもしれない。なにより大切なのは、危険な雪崩地形や状況を判断し避けることである。

注:本ガイドラインは1994年のデータに基づいており、埋没から15分以内の生存チャンスは92%となっています。その後のデータの蓄積で、2001年に、最初の18分で91%の生存が得られる、と報告されています。(注:UK DIMM 大城和恵)

(8)雪崩救助 -2.総論

A.雪崩事故は医療的緊急事態である。15分以内に救出された人々の高い生存率は、続く20分で急落するので、犠牲者はその仲間により場所を同定し、救出されなければならない。現場の人々は、その地帯が安全ならば、迅速な捜索を開始しなければならない。救助を呼ぶ前に15分は探す。しかし、もし携帯電話などがすぐに使えるなら、救助要請を直ちに行うのは現実的である。

B.医療従事者と捜索犬(訓練士と共に)を可及的速やかに現場に運ぶよう努める。特に、雪崩から90分以内に。しかし、現場の安全が第一に考慮すべき点である。救助者が現場作業を開始する前に、経験ある雪崩安全判断者が現場の安全を確認しなければならない。

C.埋没から35分稲以内の犠牲者は、迅速に引き出さなければならない。もし埋没者が重篤な状態にあれば、それは窒息か外傷によるであろう。完全な埋没(頭と体幹の埋没)後は、病院に搬送し、入院の上で24時間は経過を診る。

D.埋没時間が35分以上の犠牲者は、低体温症かもしれない。救出は可能な限り丁寧にすべきである。

E.Air pocketは生存に必須である。救助者はAir pocketを探す。すなわち口と鼻の周囲にいかなる隙間でも存在するかを見る。口と鼻と、両方が完全に塞がれた時のみ、air pocket無し、とする。

F.心停止患者の治療は、埋没時間の長さ、体温、air pocketの存在による。
埋没から35分以内の患者は低体温症ではないと想定される。もし患者の脈が触れないなら、窒息か外傷による。胸骨圧迫は30分間施行すべきである。
埋没から35分以上の患者は、低体温症であると考えられる。もしair pocketがあるか、不確かなら、胸骨圧迫を施行するかの決定は低体温症ガイドラインに従ってなされる。もし核心温が測定でき、32℃(90°F)以上なら、標準的なACLSプロトコールに従う。

G.低体温症は低体温症ガイドラインに従って治療すべきである。

H.外傷は外傷ガイドラインに従って治療すべきである。

(9)雪崩救助 -3.一般人用ガイドライン

評価と治療

A.予防は雪崩生存率を上げる最も効果的な手段である。

B.もし誰かが雪崩に巻き込まれたら、生存率を上げる最善の方法は、そのパーティーの他の仲間による救助である。パーティの全てのメンバーがシャベル、折りたたみ式プローベ、ビーコンを携帯し、ビーコンの使用を訓練しておくべきである。

C.もし患者の呼吸が無く、循環のサインが(60秒間の脈の確認後)なければ、埋没時間が35分以内であるとわかっている、あるいはわからないが35分以内であると想定されるなら、心肺蘇生を30分施行する。

D.もし患者の呼吸が無く、循環のサインが(60秒間の脈の確認後)なければ、埋没時間が35分以上とわかっている、あるいは不明だが35分以上と想定される場合、air pocketが存在しているか不明であれば、心肺蘇生を開始する。もしair pocketがなかったなら、心肺蘇生を開始しない。

E.関連する外傷が無いか、注意深く評価する。外傷ガイドラインに従う。

目次

各ガイドラインは以下にまとめております。こちらからご覧ください

アラスカ寒冷障害GL(2005):はじめに
アラスカ寒冷障害GL(2005):低体温症
  アラスカ寒冷障害GL(2005):雪崩救助
アラスカ寒冷障害GL(2005):凍傷

         

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