山岳医療救助情報 Mountain Medicine and Medical Rescue Information

アラスカ寒冷障害GL(2005):凍傷

(10) 凍傷-1.はじめに

【はじめに】

凍傷とは組織の凍結をいい、表面組織のみ侵されたり、骨迄進展しうる。
凍傷の発症と重症度は外気温、風速、暴露時間、暴露範囲の大きさ、下記の傾向が関与する。

・ ひどい、不十分な冷気や風からの隔離
・ 浸水
・ 高度
・ きつい衣服や靴による循環障害
・ 疲労
・ 外傷
・ 循環疾患
・ 低栄養
・ 脱水
・ 低体温症
・ アルコール、薬物使用
・ タバコ

凍傷組織への障害は組織内(典型的には細胞間)の水分が結晶化し、結果的に細胞内の電解質が濃縮することによって起こる。
凍傷はアラスカでは頻繁にあらゆる状況で認められるが、浅い凍傷は自宅で患者自身で治療されている。
時に、評価と治療をうけるため医療施設に搬送が相応しい重症な例もある。凍傷が深いからといって、野外で解凍を施行するために救急医療従事者を必要とする事は滅多に無い。しかしながら、他の外傷に引き続いて起こった凍傷は浅い凍傷でも治療の必要がありうる。(例:自動車事故傷病者が、救助の到着や医療従事者を、氷点下にさらされながら待たなくてはならない場合)

(11) 凍傷-2.総論

【一般的ポイント】

A.凍傷を負った患者では、低体温症や他の生命を脅かす状態が存在しうるので、凍傷患者は直ちに評価し、治療を行わなければならない。

B.極寒の温度下で患者を処置する時には、まずは低体温症を防ぐ事に大きな注意を払いなさい。そして組織が凍り始める事から保護し、すでに凍結している組織がさらに悪化することから守りなさい。

C.もし凍傷部位の加温を野外で行わないと決断したなら、搬送中、凍傷部位へのさらなる外傷や、温度の変化から、保護すべきである。

D.浅い凍傷では、暴露を受けた部分の表皮と浅い皮下組織に影響を受けている。部分的に白色や灰色を呈する事でわかる。影響を受けた皮膚は、他より皮膚は硬く感じるが、押しても凹まないような堅さではない。皮膚は最初、赤くなり、ひとたび凍結すると痛みがない。迅速に復温して治療すれば、深部組織を失うような障害にはならないであろう。

E.深い凍傷は表皮、皮下組織に影響し、さらに指全体や体の部分全体を巻き込みうる。深い凍結組織では、脈は触知できず、皮膚は圧迫しても跳ね返ってこない。

F.凍傷部位にできた大きな水疱は、深い凍傷が、部分的あるいは完全に解凍された事を示す。

G.深い凍傷の治療は痛みを伴いうるので、医療機関で治療が行われるのが最善である。野外で凍結組織の復温を選択する前に、可能なら、無線や電話で野外での凍傷治療の知識を有する医師にアドバイスを求めるべきである。
搬送時間が短い(1-2時間)場合、不適切な解凍や再凍結は、治療が1-2時間遅れるより、リスクは重くなる。
搬送時間が長引く(1-2時間以上)場合、凍傷はしばしば自然に解凍することがある。温かいお湯で迅速に凍傷を暖める事より、低体温症を予防する事の方がより重要である。これは、凍結した四肢を、自然な解凍を妨げるような寒冷の中に放置してよい、ということではない。凍傷部位は患者自身を温めることで結果として温まり、その努力の結果、再凍結から守る、と予想される。

H.解凍後、再凍結した組織は、必ずといっていいほど死んでしまう。つまり、野外で凍傷部位を解凍する決定をしたなら、治療を行う者は、解凍のみならず、疼痛の管理、温かいお湯の温度維持、解凍中や搬送中の組織のさらなる外傷からの保護、これら治療過程全てを、委ねられていることになる。ひとたび四肢を野外で加温したら、歩かせるべきではない。

I.殆どの例で、患者は状況が許す限り迅速に搬送されるべきである。凍傷が軽症で他の外傷が無い場合、医療施設への搬送以外に患者を治療する手段が有れば、搬送しないことは妥当かもしれない。搬送するしないの選択は、凍傷治療の知識を有する医師に相談の上でのみ、なされるべきである。搬送しないでその場で処置をするという判断をするならば、その病院前の処置を提供する人によって、その決定について、書面で注意深く書き残すべきである。

J.注意事項 1.凍結部位をこすらない 2.患者にアルコールとお酒を許可しない 3.氷や雪をあてない 4.冷たい水で凍結部位の解凍を試みない 5.凍結部位を、高い温度(ストーブ、排気ガスなど)で解凍を試みない 6.形成される水疱を壊さない

K.凍傷組織は、加温中、加温後、非常に丁寧に扱う

L.凍傷患者をヘリコプターで移動させる時、ローターヲッシュによる風冷でさらに寒冷に暴露することから保護する。ヘリコプターから乗り降りの際にエンジンを止める事ができるなら、ローターヲッシュを最小限に抑える事ができる。もしこれが、航空観点から安全とは言えないなら、患者は凍傷や低体温症を悪化させないよう、さらなる熱喪失や皮膚の暴露から避けるため、注意深く覆われなければならない。

(12) 凍傷-3.現場での対応

【現場での対応】
最初に駆けつけた人/EMT-Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ/救急士/クリニック(大きな病院でない)・・・のために

評価と治療

A.低体温症を想定し、低体温症を評価、低体温症があれば治療する。

B.凍結部位は注意深く評価する。感覚が喪失していると、患者はその部位の軟部組織の障害に気づかなくなるからである。

C.バイタルサイン一通りと体温を確認する。

D.凍傷部位の貴金属、衣類があれば、とりのぞく。

E.最終破傷風予防接種日を含む、現病歴を確認する。

F.凍傷の末梢が骨折している場合、抵抗が無いなら、まっすぐにするよう試みる。末梢循環を悪化させない方法で、骨折部を固定する。

G.搬送予定の医療設備内で、凍結組織の加温が完遂できるかどうかを確認する。もし可能なら、凍結した部分をさらなる外傷や寒冷、衝撃から保護して、患者を搬送する。

H.野外で凍結組織を加温する判断がされたなら、凍傷部位が壁面や底面に接しないような充分な大きさの容器に、温かい湯槽を準備する。湯温は37-39℃がよい。
一般的に凍傷患者は、疼痛緩和にオピアトを要求はしない。彼らは時に、オピアトでない疼痛の薬剤、抗不安剤を必要とする。もし可能なら、経口鎮痛剤(アセトアミノフェン、イブプロフェン、アスピリンなど)の内服を医師に個コンサルトする。アスピリンやイブプロフェンは、アラキドン酸カスケードをブロックし、結果を改善しうる。
外傷に伴うNFCIや凍傷は、著しい浮腫と強い疼痛を来しうる。これらの患者は、初期治療でオピアトを必要としうる。この例では、二次救命処置を行う人は、医師の署名のある規約やオンラインメディカルコントロールに従って、モルヒネや他の鎮痛剤投与をする。

訳者による注釈:
薬剤アレルギーがない限り、イブプロフェンの使用が現在は一般的。
NFCI non freezing cold injury:0℃以上ではあるが寒冷湿潤下に長時間曝されることによって起る寒冷傷害

I.加温中には、注ぎ足す温かいお湯が、用意されていなければならない。

J.凍傷した部位の末梢端が赤く回復するまで、お湯を37-39℃に保ち、凍傷部位の周囲を優しく循環させる。

K.加温後の疼痛は、生存組織の復温が成功したことを示す。

L.加温後、凍結していた組織は温かい空気で乾燥させる。タオルでふいて乾かさない。

M.深い凍傷を負っていた組織は、解凍後に水疱が発達し、チアノーゼ色が現れる。水疱は壊さないよう、外傷から保護されなければならない。

N.凍傷に冒された指趾の間にはパッドをあて、やわらかく滅菌された被覆材でゆるく巻く。冒された部位に過度の圧がかかることを避ける。

O.加温した指趾は、可能なら、心臓と同じ高さに位置するとよい。

P.搬送中、加温した部分は、再凍結と他の外傷を避けて保護する。凍傷部位の周囲には、直接圧がかかることを防ぐための枠組みを作るとよい。

Q.患者の生命危機、あるいは救助者の危険をのぞき、凍傷を負った足で歩かせてはならない。ひとたび凍傷した足が加温されたら、患者は歩行はできないものとする。

目次

各ガイドラインは以下にまとめております。こちらからご覧ください

アラスカ寒冷障害GL(2005):はじめに
アラスカ寒冷障害GL(2005):低体温症
アラスカ寒冷障害GL(2005):雪崩救助
 アラスカ寒冷障害GL(2005):凍傷

         

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