火山の医療問題
一般的に、火山が噴火し、人が被害に遭う医療的な内容、対策を説明します。(写真提供:長野県)
火山噴火時の医療的問題総論
原因による分類
熱による傷害 | 水蒸気、熱いガス、熱い灰 |
機械的な傷害 | 噴石、飛んでくる灰、泥流 |
化学的な傷害 | 有毒ガス |
の大きく3つに分けられます。
多くの噴火は、突然、激しく起こるため、人々が逃げる時間は殆どないのが実際です。
このため、これまでの報告では、怪我をする人に比べ、亡くなる方の比率が高くなっています。
病因から分類
外傷 | 噴石、火砕性物質が飛んで来て、頭部や背中(体幹)に怪我する。 |
気道熱傷 | 熱い水蒸気や灰を吸い込んで、気道が熱傷(やけど)すると浮腫んで窒息してしまう。 |
熱傷(やけど) | 水蒸気や熱い灰にそのまま曝される。 熱傷は怖い:熱傷の範囲が広い場合や深い場合、気道に起こった場合、皮膚の薄い子どもや高齢者は、非常に重篤で致命的になります。 |
窒息 | 大量の灰を吸って呼吸ができなくなったり、有毒ガスで窒息する。 |
噴火時にどこに居たかによって、受ける被害が異なってきます。
有毒ガスのこと
火山噴火で噴き出すガスは、水蒸気H2Oが最も多く、次が二酸化炭素CO2、二酸化硫黄So2、ほかに、硫化水素H2Sなど。特に危険なのは、二酸化炭素と硫化水素です。
どちらも、空気より重いのが特徴。
色がついていないので、目で見てわかりません。
二酸化炭素CO2 | 20%以上の濃度になると、わずか数回呼吸をしただけでも、急激に低酸素血症、意識消失、呼吸麻痺から窒息を起こす。 |
硫化水素 | 硫黄臭。高濃度を吸うと、ひと呼吸しただけで、青酸カリのように、細胞が呼吸できなくなり、死に至ってしまう。 |
二酸化硫黄 | 粘膜の炎症を起こす。呼吸障害も来たし、脈拍、血圧を上げるが、直接の死因にはなりにくい |
ただ、噴火時にどのガスが出ているか、どのくらい出ているか、わかりません。
いざ、噴火した場合、くぼ地等の低い場所にとどまらない方が、火山性ガスの影響を受けにくくなるでしょう。
その他知っておきたいこと
・小さな灰
それ自体は生命へのリスクは低いですが、目や角膜の炎症を起こします。
肺に吸い込まれると、喘息や肺の病気のある人は、病気を悪化させます。
・シェルターは安全か?
安全なシェルターは、コンクリートでできたドーム状のものをイメージして下さい。
平屋根のシェルターでは、10cm、屋根に灰がつもり、雨でも降ればつぶれます。
大きな岩が飛んでくれば、つぶれます。
シェルターは一時退避の場所になり得ますが、安全レベルは、噴火状況で異なります。
火山を登る場合の注意点
日頃の登山と共通していること
・現地の気象情報を知る
・現在の噴火の警報レベルを知る
・地域の規制に従う
・現地の情報や状況に知識と経験のあるガイドと行く
・警察・家族に登山計画書を提出してから行く
・肌を露出しないように、帽子、長袖、長ズボン
・雨具、ヘッドライトを持参する
火山を登る際に留意すること
・3点セットの持参
頭への怪我を軽減、灰を吸い込まない、灰からの視界確保と目の保護
□ ヘルメット
□ マスク
□ ゴーグル
・ヘッドライト
火山灰は煙りと異なり、光を通しません。暗いです!
・噴火時に何が危険かを知っておく
□ 熱(水蒸気、灰)
□ 有毒ガス
□ 噴石
□ 火砕流や泥流
・シェルターの位置を確認しておく
・噴火時のサインを早めに見つけるよう、注目しながら登る
・風向きを把握しておく
いざ、噴火した、という場合は?
・直ちにその場から離れる。遠ざかる
・シェルターや大きな岩陰に逃げることも考える
・頭部を覆う(厚手の帽子、ヘルメット、ザックなど)
・背中を覆う(ザック)
・火山性ガスは比重が重いので、くぼ地や低い所に逃げ込まない
・可能であれば、風上方向へ逃げる。火山性ガスや灰の影響を受けにくい
・視界の確保に、ゴーグル、ヘッドライト
残念ながら、噴火してしまうと、絶対助かる方法、というのはありません。
少しでも、助かる確率を高めるためのことを、積み重ねるしかない、というのが、実際です。
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