低体温症の基本 & 避難場所での対策
屋外に退避して救助を待っている方々、避難所でも十分な暖房がなく寒冷環境にいらっしゃる方へ、低体温症にならないために、以下のような点に注意することをお勧めします。
なぜ低体温症になるのか?
- 低体温症は、熱が産生できない状態、熱が奪われ易い状態で起こります。体の中心の温度が35℃まで下がると低体温症ですが
低体温症になりやすい人・なりやすい状態
- お年寄り、小児
- 栄養不足や疲労
- 水分不足
- 糖尿病、脳梗塞など神経の病気がある人
- 怪我をしている人
低体温症に気づくには?
気づきにくいのが特徴です。手足が冷たくなったり、寒いな、と感じることが重要です。震えは体温が下がり始めると、無意識に始まります。これは、体温が下がり始めているという、体への警告サインです。分かり易いサインですが、寒くてもはっきり震えないことがあり、震えだけを目安にすると、見逃すことがあります。
体温が下がり始めのこの段階でのんびりしていると、本当に低体温症になります。震えがあるのは、熱を上げるエネルギーが残っている証拠です。ここで改善するのが一番安全で、早道です。
低体温症の対応が遅れるわけは?
初期の低体温症は、心臓発作のように緊急性が高くないので、もう少し・・と言ううちに、気づくと悪化してしまいます。低体温症は、進むと、判断力が低下するので、適切な判断ができなくなります。
体温測定は?
一般の体温計で体温を測っても低体温症の診断にはなりません。
低体温症の体温は個人差がありますので、測定する必要はかならずしもありません。
とにかく、震えがあるか、意識がしっかりしているか、を確認して下さい。
震えが始まったら何をすればいいのか?
1.隔離
冷たいものからの接触をさけます。地面に敷物をしたり、風を除けたり、濡れた衣服は脱いで下さい。着替えが無くても、濡れたものは脱いで、毛布などにくるまって下さい。屋外にいる場合は、これ以上濡れないように、湿気から隔離できる衣服やビニール素材などがあれば、くるまって下さい。
2.食べる
何より体温を上げるエネルギーを補給することが大切です。
3.保温
体温を奪われないために、なるべく厚着をして下さい。顔・首・頭からの熱は逃げ易いので、帽子やマフラーなどで保温して下さい。
毛布などにくるまる場合は、一人でくるまるより2〜3人でくるまると暖かいです。特にお年寄りや小児は、元気な人が寄り添って一緒に包まると、保温効果が高いです。
震えがある段階では、どんな温め方をしても大丈夫です。
4.加温
湯たんぽのように、熱のあるものを体に当てて、熱を伝えるようにします。温度は高い方が、熱がたくさん体に伝わります。やけどをしないように、衣類の上から当てるようにしましょう。
5.水分補給
体温が下がると利尿作用が働いたり、体内の水分バランスが変化し、脱水になります。温かくなくてもいいですので、水分をとります。温かければ、さらに理想ですが、まずは水分補給です。水分補給は、直接体温を回復させる作用はありませんが、体の調子を整えたり、その他の病気の予防にも効果的です。
食事の摂り方
残念ながら、物資の限られた状態では、なかなか有効な食べ方があるわけではなく、明らかに医学的に証明されているわけではありませんが、以下を参考にして下さい。
- 寝る前に食事をとる 就寝中の体温はわずかに低下するため、寝る前の食事は体を温めてよく眠る効果が期待できそうです。
- できれば1日2回は食事をとっていただきたい。
- 炭水化物(甘いもの、パンや米、カップラーメンなど)は体温を上げるのに効果的です。
- 食べ物の確保にかなりのエネルギーを消費するようであれば(どこかに取りにでかけたり、長い時間列に並ぶなど)、食べる量を減らして、体力を温存する方が望ましいです。
そして、もしカロリーや食べるものが限られているのであれば、適切な保温、避難所の確保こそが非常に重要になります。
悪化のサインは?
震えがなくても低体温症になっていることもあります。
見当識障害(つじつまの合わないことを言う)、ふらつくなども、重症な低体温症の症状です。また、震えていた人が暖まらないまま震えがなくなって来るのは重症になっている証拠です。
震えがなくなったり、意識がもうろうとしてきたら?
基本治療
医療機関へ搬送できることが望ましい
避難所のような医療機関への搬送が難しい状況では
- これ以上体温が低下しないよう、今まで以上にしっかり加温をしてください。
- コマメに、意識が悪化していないか、呼吸をしているか、確認して下さい。
- 丁寧にそっと扱い、可能であれば横に寝かせて下さい。さすったり、着替えの際に乱暴に扱うと、心臓が止まるような不整脈を起こすので、注意が必要です。
- むせないようであれば、カロリーのある飲物や食べ物をとらせてください。
- ペットボトルなどに、お湯を入れて湯たんぽを作り、脇の下・股の付け根・首の回り(脈の触れる所)に当てる(衣類の上から当てるなどやけどに注意)
病院への搬送を考える場合
下記の場合は、搬送手段や医療機関の受け入れ可能な状態が確認でき次第、加温を可能な限り維持しながら搬送してください。
- 怪我をしている場合、糖尿病や脳梗塞がある場合、子供、高齢者は体温の回復が困難なことがありますので、病院搬送の判断を早める必要もでてきます。
- 数時間、加温につとめも意識が悪くなる場合や呼吸状態が悪化する場合
- 加温しても変化のない場合
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