救助要請と待機の仕方
救助要請と待機要領
- 通報要領~「山岳遭難です」110 番や 119 番の相手は山の地形に詳しいとは限らない。
- 直接通報~当事者は「大ごとにしたくない」という意識から、通報が遅れがち。
- 登山届から救助隊が得る情報~遭難パーティーの対応力を推測。
- 救助隊に気づいてもらう方法~視覚、聴覚、電話。
- ヘリコプター接近時~ダウンウオッシュ、メインローター、テールローターに注意。
1. 通報要領
(1) 通報の流れ
(2)優先して伝えること
- 山岳遭難であること
- どこで(場所)
- どんな状況で
大城先生からのワンポイントアドバイス
・山は電波が不安定。通信が突然途切れる可能性がある。
・最も大事な情報は、「場所」。携帯電話の位置情報(GPS)をON にして通報する。GPSの緯度・経度を伝えても良い。
・バッテリーは温存。懐で温め、電話は救助隊とのみ使用する。
2.直接通報
遭難が発生した時に、家族、学校、友人、会社等に相談してから救助要請をすると救助開始が遅れる。 携帯電話のバッテリーが消耗してからの通報は、途中で電源切れとなる恐れがある。ヘリコプターは、基本的に日の出から日没までが活動可能時間。 また、現場に居ない人からの通報では、正しい情報が聞き取れない。遭難現場にいる者の判断で直ちに救助要請をすること。
3.登山届から救助隊が得る情報
担当部署では、通報内容と登山届の内容を確認して、持物やメンバー構成等から遭難者等がビバークできるか、体力は持つか、傷病の状態を悪化させずに待機できるか、などの状況を推測する。
4.救助隊に気付いてもらう方法
日本の公的救助機関は、以下を薦めている。
①ヘリコプターからは、動くものや周囲と違う色(ピンク、オレンジ、イエロー等)、光は見つけやすい。ヘリコプターへの合図は、タオルやカッパ等を頭上で大きく振り回す、植生の中では木を揺らすなどが良い。
※ 発煙筒も良いが、風があるとわかりにくい。
※ 救助を必要としていない人はサインをしない。
大城先生からのワンポイントアドバイス
場合は「V(YES)」サイン、助けを必要としない場合「NO」サインを使用するとされている。日本国内の航空関係者も、ヘリコプター誘導の際に「 V」サインを用いて進入を許可する。日本の山岳地は藪や樹木も多く、まず発見してもらうために、動きのあるサインを送り、発見してもらった後も、動いているものは視認性が高い。
(ICAR 航空救助部会勧告)
②ライトやホイッスルによる遭難信号を覚える。(10秒間隔で1回を1分間吹き1分休む、を繰り返す。応答は、20秒間隔で1回を1分間吹き1分休む、を繰り返す。)ライトも同様。
5.ヘリコプター接近時の注意事項
ヘリコプターは、遭難現場に到着して、遭難現場の上空を通過した後にリスクが低いと判断してから救助作業に入る。ヘリコプターが吹き下す風(ダウンウオッシュ)に注意する。
- ヘリコプターが近づく前に
・ 砂や小石が飛んでくるのでサングラスやゴーグルをして目を保護すること。
・飛散物を出さない。(テント、ツエルト、ゴミ袋等は、ザックに収納する。風で飛ぶような帽子は脱ぐかアウターのフードを被る。) -
ヘリコプターが接近してきたら
・低い姿勢でいること。 -
ヘリコプターに接近する時
・パイロットなどの合図を待ってから近付く。
・着陸したヘリコプターに接近する場合は、ヘリコプターよりも低い側から接近する。
・テールローターは低い位置にあるため、ヘリコプターの後側へは絶対に近付かない。
・全ては、救助隊員の指示に従うこと。
大城先生からのワンポイントアドバイス
救助要請の判断は早めに行い、夜間でも必要なら躊躇しないこと。様子をみているうちに悪化したら、「事態を招いたこと」「通報の遅れ」の2つの管理責任が問われることになる。
執筆:山岳医療救助機構 大城和恵
協力:北海道警察
2018.3 作成
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